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主に日本での歴史

ゲルマニウムトランジスタの発明は1948 年ですが[1]、シリコントランジスタ
ができたのは1954 年です[2]。 最初はトランジスタならではという製品は
なかなか存在せず、日本では1955(昭和30)年頃、トランジスタラジオが
製品化されました[3]。

大きく動き始めたのは映画“Always 3 丁目の夕日”の時代(昭和33 年)ごろ
からで、真空管の置き換えで既存製品に適用するという発展の仕方でした。
今では半導体集積回路無しでは考えられないコンピュータも、初期のものは
集積回路 ( IC ) は勿論、トランジスタが発明される前から存在していました
[4]。

テレビ放送が日本で開始されたのは1953 年(米国1941 年)、カラー放送
開始は1960 年 ( 米国では1954 年 ) なので、トランジスタによってカラー
放送ができるようになった訳ではありません。
(カラーテレビは英国で1928 年に作られた)。
これらは真空管が使われており、真空管もミニチュア管、サブミニチュア管と
小型化が進み1970 年頃まで真空管が電子機器のなかで要の位置に
ありました。

一方エレクトロクスに携わるほとんどの人が読んでいる“トランジスタ技術”の
創刊は1964 年10 月(東京オリンピックの年)なので、そのころまでに
トランジスタが普及(置き換え)したと推測できます。

トランジスタを使ったアンプはノイズが多くて、音楽愛好家には不人気でした
が、安くて、軽く、小さくなるので1970 年代はトランジスタ技術の進歩が
急加速されました。

コンパクトカセット+AM/FM ラジオのついたトランジスタで動くいわゆる
ラジカセは1968 年に製品化され、1979 年には歩きながら音楽が聞ける
ヘッドフォンステレオが出現し、その年(1979 年)日本では真空管の製造が
打ち切られ、真空管が完全に駆逐されました。

さらに1970 年代後半は集積回路が普及し、コインゲームの急拡大、特に
電卓戦争と言われた電卓の低価格化競争で集積回路の微細化、小型化が
進み、1980 年代はビデオデッキおよびハンディビデオ、LD およびCD の
出現、パーソナルコンピュータの高性能低価格化、テレビゲームの出現、
1990 年代は64 ビットCPU をつかう高機能テレビゲームの出現、大画面
液晶テレビ人気、携帯電話およびPHS の普及、インターネットの普及、
2000 年代はナノテクノロジーがブームになって半導体プロセスを適用した
MEMS 技術の普及が始まり、HV、EV、太陽光、携帯電話、携帯端末の
普及は、低消費電力半導体の開発ドライバーとなり、パワー半導体も市場が
拡大されていくようになりました。 そして2010 年代は第4 次AI ブーム
( バブルという人もいる ) となっています[5]。
半導体の市場はこのように60 年以上拡大し続けています。

半導体とは?

固体物質は3 つのクラスに分類できます。絶縁体、半導体、と伝導体です
[6]。 Fig.1 にそれぞれのクラスに対応した比抵抗範囲と半導体でよく
使われる材料Al、Cu、Silicon、石英ガラス(SiO2)の比抵抗を示します。

半導体の比抵抗は絶縁体と伝導体の間の抵抗値をもつものと定義され
ますが、Silicon の抵抗値はFig.1 にみられるように、絶縁体に近い高抵抗
から、伝導体に近い低抵抗まで幅広く分布しています。これは不純物を
わずかに加えるだけでこのような広範囲に精度よく比抵抗を制御できる
のが特徴で、便利な性質をもつことがわかります。

Si が有利なのはそれだけではありません。
Fig.2 に示すクラーク数(地下16 キロ以内に存在する元素の比率を表す数)
では半導体の主材料であるO、Si、Al が1 位、2 位、3 位となっており、
電極にAl、絶縁体にSiO2、半導体基板にSi を主原料とする
Si 半導体デバイスは、環境保護、持続可能な発展のために真に最適な
材料であることがわかります。

Fig.1



Fig.2



N 型半導体とP 型半導体

ここで使われるN はnegative(負)の頭文字を表すもので、電磁気学では
電荷を運ぶ媒体をキャリアとよび、それが負電荷の場合電子になります。
またP はpositive の頭文字ですが、半導体では正電荷のキャリアは陽子
(水素の原子核)ではなく電子の欠けた状態のhole になります。日本語では
正孔と呼んだり、ホールと言ったりします。つまりN 型半導体とはキャリアが
電子、P 型半導体とはキャリアが正孔であることを表します。



Si をN 型半導体にする場合はP やAs のように価電子が5 価になる
原子周期表でV 族に属する原子を負不純物として導入します、P がSi と
置き換わった様子をFig. 3 に示します。

この場合P の5 番目の電子は容易に伝導帯へ電子が供給され、負電荷の
キャリアができますのでN 型になります。これを電子は “ donated ” された
といい、P をドナーと呼びます。

Fig. 4 に示すIII 族の原子であるB は4 番目の価電子として電子が
“ Accepted ” されたといい、B をアクセプタ(Acceptor)と呼びます。
この価電子帯の正孔が形成され正電荷のキャリアができますので、
P 型半導体になります。



シリコン結晶

デバイスを作りこむときは、Si 結晶をウェーハ状に薄くスライスした基板を
使います。
シリコンの結晶はFigure 5 に示すダイアモンド構造になっています[7]。



従ってシリコンウェーハを購入するときは面方位を指定する必要があり、
面方位はたとえば、(100)、(111)等と指定します。
これはミラー指数というもので、Figure 6 に示すような単位立方体を基準
として指数が (abc)となっていたならば、aはx 軸、b はy 軸、c はz 軸の値を
表し、たとえば(100)という場合は、x 軸は1 で交わりy 軸、z軸とは交わらない
平面を示し、この正反対の面は と表します。

これをサイコロのように考えると、その6 つの側面は
 になります。 
(110)面はx軸、y 軸は1、z 軸とは交わらない面になります。
そして (111)面はx 軸、y 軸、z 軸すべて1 で交わる面になります。

  注)ミラー指数の中身は座標ではなく軸との交点の逆数を表します。
    たとえば(200)だとx 軸との交点は2 ではなく、1/2 = 0.5 となります。

実際に基板を購入するには面方位のほかに、基板のタイプ(N、P)、比抵抗
や基板サイズ(直径)等を指定します。半導体は米国で開始されたため
ウェーハのサイズはインチで表現されます。
そこで6 インチはと言えば厳密に6 インチではなく直径が15cm ( 150mm )
であることを表します。最先端では12 インチが採用されています。
つまり、30cm ( 300mm )です[8]。

ウェーハ径は2000 年ごろまでは5,6 年間隔で大きくなってきました。これは
まったく経済的な理由でたとえば、6 インチウェーハの面積が、177㎠、
12 インチは707㎠なので、あるデバイスのサイズが1㎠ だとし、同一装置、
同一時間で処理できたとすると、単純計算で6 インチでは1 枚あたり177 個
できたのが12 インチだと707 個もできるので大幅なコストダウンになるから
です。

特にULSI では微細化以上に集積率(機能)が進むため、チップが大きくなり
ウェーハ径を大きくしなくては、採算が合わなくなるので、450mm ウェーハの
要望がでていますが、実現への道のりは300mm のときよりもさらに長く
なっています。

ウェーハプロセス

1998 年頃から製造プロセスをウェーハ投入からコンタクトを含む第1 メタル
レイヤ前までをFEOL( front-end-of-line ) プロセス、第1 メタルレイヤから
ウェーハプロセス完了までをBEOL(back-end-of-line)プロセスと分ける
ようになりました[9]。

多層配線プロセス導入によりメタル以降のプロセス数がそれまでの
プロセス数以上に多くなり、直面する課題や必要とする専門能力が全く
異なってきたからです。 しかしフォトマスクを中心としてプロセスが進むことに
変わりありません。Fig. 7



参考文献
[1] J. Barden, W. H. Brattain, The Transistor, A Semi-Conductor Triode,
  Physical Review. 74 (2): 230–231. (1948)
[2] IEEE Spectrum, The Lost History of the Transistor,
   Author: Michael Riordan, May 2004, pp 48-49
[3] https://www.sony.net/Fun/design/history/product/1950/tr-55.html
[4] http://www.computerhistory.org/timeline/computers/
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_artificial_intelligence
   #cite_note-169
[6] Simon SZE, Ming-Kwei LEE, Semiconductor Devices Physics and
   Technology, WIELY (2013)
[7] Marius Grundmann, The Physics of Semiconductors An introduction
   including Nanophysics and Applications, Springer (2016)
[8] 垂井康夫編、半導体プロセスハンドブック、プレスジャーナル (1996)
[9] 谷口研二、鳥海 明、財満鎭明 編、半導体デバイスシリーズ3
  プロセスインテグレーション、丸善株式会社 (2009)