HOME > 製品・サービス > その他の技術情報 > 書き下ろし連載 半導体の技術講座 > プロセステクノロジ




リソグラフはマスク上に描かれた幾何学的模様を感光性フィルム
( レジストという ) が全面にコートされている半導体ウェーハへ転写する
プロセスです。イオン注入領域、コンタクトウィンド、やボンディングパッド
領域など、マスクパターンは集積回路のさまざまな領域を転写します。
リソグラフによって作られたパターンは最終的には
ウェーハ上には残りません、回路パターンのレプリカを作るだけです。

実回路パターンを作るためには、レジストパターンをもう一度デバイスの
存在するレジストの下のレイヤへ転写しなければなりません。
このパターンはレジストのないエリアを選択的にエッチングすることで転写
されます[1,2]。


露光装置 ----------

パターン転写プロセスは露光装置を用いて行われます。露光装置の性能は
解像度、重ね合わせ精度、スループットの三つのパラメータで表されます。
最後のスループットが意外に感じられるかもしれませんが、露光装置は
半導体プロセスの中では最も高額な装置であるため、スループットが悪いと
投資の回収ができなくなるからです。実際マスク製造に用いられる電子線
直描装置がウェーハ工場で採用されないのはスループットがべらぼうに
低いからです。半導体の特徴である微細化のキーテクノロジーが露光技術
になりますが、これまでに何度も物理限界に到達したと言われて、その都度
ブレークスルーしてきました。そのブレークスルーは短い波長に対応した
光源だ、と思っている人が少なくありませんが、それは間違いです。

ステッパが最初に現れたときは、g 線(λ: 0.436μm)で、それまでの露光
装置はI 線 ( λ: 0.365μm ) でした。最初のブレークスルーはそれまでの
投影露光機の光源は固定で、レンズを使ってウェーハ全体に広げるタイプ
したが、露光エリアを小さな部分にして光源をスキャンすることで、ウェーハ
全体へ均一露光ができるようにしたものです。

光源は移動せずステージがXY 方向へ移動することで同様な効果が得られ
ますが、ステッパと呼ばれる露光装置は、さらに縮小露光法が採用され、
マスクパターンに対するウェーハ上の転写パターン比は5:1と縮小投影する
ことで一気に微細化を加速させ、サブミクロン時代の到来となりました。

KrF(λ: 0.248μm)、ArF(λ: 0.193μm)と言ったエキシマレーザ露光装置
の出現も単に波長が短くなったのではなくステッパのショット(フィールド)を
スリットにしてマスクとウェーハが逆向きにスキャンするというスキャンアンド
リピート方式となり、より均一でより大きなエリアへの露光ができるように
なりました[3]。

このArF スキャナーの出現でデザインルールは100nm を切るようになり、
さらにタイムリーに出た液浸露光により、65nm~32nm ノードのデバイスが
実現されました。

さらにダブルパターニングにより28nm 以下のデザインルールにもArF の
光源で対応できるようになりました。

このように微細化は光源の短波長化ではなく装置的innovation によって
進められており光源は二次的要因になっています。

なおsub-10nm ノードもマルチパターニングで行うとも言われております。
もちろん波長を短くする努力は続けられており、昔からEUV は2 年後に実用
化されると言われ続けています。今年のISS2017 では実用化は2~3 年後と
いう話がでていました[4]。 ノード7nm 対応したEUV 装置が2020 年に実現
するというメーカの話もあります。


転写 ----------

Fig.1 にCV パターンをマスクからシリコンウエハ上の酸化膜レイヤへ転写
ステップを示します。ウェーハには0.5μm以上の波長では感光しない
レジストが塗布されているので、通常イエローランプを採用したクリーン
ルーム内で露光プロセスが行われます。



レジストの密着性を上げるためには、酸化膜表面を親水性から疎水性に
変えなければなりません。もっともよく使われる疎水性プロモータはhexa-metylenedi-siloxane ( HMDS ) です。

転写プロセスの最後はレジスト除去プロセスになります。レジスト除去の
方法は大きくWET とドライに分けられ、WET の代表的なものは硫酸または
硫酸過水を使います。ほかに有機溶剤やアルカリ剥離もあります。レジスト
のポストベーク温度が120℃以下で長時間でないならばアセトンで除去する
ことも可能です。

ドライの場合はアッシャと呼ばれる装置を使って、レジストを除去します。
ドライの場合の主要な材料はWET の場合よりも格段に毒性、可燃性、など
危険性の少ない酸素が使われます。O2 プラズマアッシングは低圧プラズマ
放電で酸素分子を分解して反応性の高い酸素原子(O)を作ります。

その酸素原子はレジストをガス化するので、反応生成物は装置から排気
されます。オゾンの場合は常圧でレジストと反応し除去することができます。
UV オゾンは、UV でレジストの結合を切るので、より効率的にオゾンが
レジストと反応します。


光近接効果(OPE)[5] ----------

露光措置のinnovation により露光波長より小さいパターニングが可能に
なったのは先に述べたとおりですが、そのような微細パターンの場合、
光近接効果 ( Optical proximity effect ) によりマスクパターン通りには
結像できなくなります。マスク設計の段階でこのOPE を最小限にする
テクニックがOPC ( Opticalproximity correction ) で、その概要をFig.2 に
示します。OPC によりさらにタイトなデザインルールが可能になり、
プロセスの信頼性および歩留りが著しく向上しました。



なおDFM ( design for manufacturing ) とOPC が同義に扱われることが
ありますが、DFM は一言で言うと 「 製造のしやすさを考慮した設計手法 」
なのでOPC よりも広い概念です。近年では3D-CAD を通して機械設計にも
用いられるようになっています。


ウェットエッチング ----------

ウェットエッチは広範囲な半導体プロセスで使われます。最初はインゴット
からワイヤソーでウェーハを切り離した後の研磨に使われ光学的フラット面
を作りだし、ダメージを取り除きます。保管中あるいはハンドリングにより
生じたコンタミをエピまたは熱酸化前にケミカルクリーニングにより取り除き
ます。

このようにウェットエッチングは特にポリシリコン、酸化膜、および窒化膜の
ウェーハ全面エッチに適した手法です。
ウェットエッチのメカニズムは基本的な三つステップからなります:

 ① 反応物質は拡散により反応面まで移動し、
 ② その面で化学反応が起こり、
 ③ 生成物は拡散により取り除かれます。

半導体プロセスでは、化学溶媒へ完全にウェーハを浸けるか全面に
スプレーする方法がとられます。浸没式のウェットエッチではウェーハは
エッチング液に完全に浸けられます。通常超音波など機械的揺動が
エッチング均一性とエッチングレートの安定化のために行われます。

スプレー式は常にフレッシュな薬液がウェーハ表面に供給されるため
エッチレートとエッチング均一性が増加および向上するので、スプレー式
エッチングが浸没式に徐々にとって変わりつつあります。




ドライエッチング ----------

パターン転写プロセスでは露光により形成されたレジストパターンは、その
下のレイヤのマスクの役割をします。ほとんどのレジストの下のレイヤは
アモルファスか多結晶膜(酸化膜、窒化膜、金属膜…)です。Fig.3a

ウェットエッチを行なった場合、一般に等方性(縦方向と横方向のエッチング
レートが同じ)なので結果はFig.3b のようになります。hf をエッチングされた
膜厚、l をレジスト直下のアンダーカット部の横方向の長さとすると異方性度
を次の式で定義できます。



t: 時間、Rl: 横方向のエッチングレート、Rv: 垂直方向のエッチングレート
等方性エッチングの場合Rl = Rv なのでAf = 0 となります。パターン転写に
おけるウェットエッチングの欠点は、マスクの下にアンダーカットが入り、
エッチングしたパターンの解像度ロスが生じることです。

実際、等方性エッチングの場合要求解像度に対して膜厚は要求解像度の
1/3 以下でなければなりません。要求解像度が膜厚よりもかなり小さい
パターンの場合は、異方性エッチング(1 ≥ Af > 0)を用います。

Fig.3c にl = 0 に対応したAf = 1 の様子を示す。レジストパターンを正確に
転写しなければならないときは、異方性エッチングのために開発された
ドライエッチングを使う必要があります。半導体分野でドライエッチングは
プラズマアシストエッチング ( plasma-assisted etching ) を意味しますので
略してPE ということもあります。

プラズマは減圧放電で形成されます。
ドライエッチングの方法は、プラズマエッチング、RIE(Reactive Ion Etching)、
MERIE ( Magnetically Enhanced RIE )、スパッタエッチング、リアクティブ
イオンビームエッチング、HDP (High-Density Plasma)エッチングがあります
[6]。


ドライエッチングの異方性 ----------

プラズマは正負同数の部分的または全数イオン化したガスと異なる数の
イオン化していな分子で構成されています。ドライエッチングの異方性を
説明するためにFig.4 に単純な並行平板RF プラズマエッチャの説明図を
示します。



カソードはコンデンサを介してRF 発信機とつながっていて、アノードが
グランドになっています。電波障害を起こさないようにRF 周波数は
13.56MHz が標準として採用されています。

自由電子は宇宙線、熱励起、その他の作用で常にガス中に存在し、その
自由電子によってプラズマが起こります。自由電子はRF電界によって振動
し運動エネルギーを得て、分子ガスと衝突します。衝突時のエネルギー移動
により、分子ガスはイオン化されます。RF 電圧がガスのブレークダウン電位
より高いとき、反応チャンバー内で継続してプラズマが発生します。
イオン化レートは10-4~10-6 台です。

正イオンに比べ電子の移動の方が早いために RF の正サイクル時は、
負サイクルの正イオンよりも多くの電子が表面に引き寄せられます。
そのため、正サイクルの方が負サイクル時よりも多くの電流が生じます。
結果としてコンデンサが接続してある電源電極(カソード)に電子がチャージ
アップし、このチャージアップにより負電位が生じます(セルフバイアス)。

正サイクルの間、電源電極の負バイアス電位は平均負電位(VDC)が電流
を緩和しネットチャージが0 になるまで増加します。セルフバイアスは電源
電圧の振幅および周波数で決まります。電源電極に生じる負のセルフ
バイアスを補償するため、Fig.4 の下側のグラフに示すように、プラズマは
アノードのグランドに対して正の電位(Vp)を形成します。

Fig.4に示すように、カソードとアノード近くの電位の傾きによりプラズマ電極
近くに強い電界が生じ、この電界はプラズマエッチングで重要な役割を担い
シース(sheath)と呼ばれます。

標準的シースは10μm程度~1mm と薄く、電極表面にコンフォーマルに
形成されます。したがって正イオンのエネルギー ゲインは電極面に垂直
方向が最大で、イオンビームはシース内で一方向になります。 
異方性エッチングはカソードまたはアノードにおかれたウェーハ表面に
一方向にくる高エネルギーイオンの照射に依存します。
これは、ウェーハ表面上にあるシースによって達成されます。

カソードとアノードでは電圧分布が異なるので、異方性エッチングもカソード
側とアノード側で異なり、より傾きの大きいカソード側の方が異方性も強く
なります。

参考文献

[1] Gary S. MAY, Costas J. Spanos, Fundamentals of SEMICONDUCTOR
  MANUFACTURING and PROCESS CONTROL, A JOHN WILEY &   
  SONS, INC., (2006)
[2] Simon SZE, Ming-Kwei LEE, Semiconductor Devices Physics and
  Technology, A JOHN WILEY & SONS,INC., (2013)
[3] Martin van den Brink, Hans Jasper, Steve Slonaker, Peter Wijnhoven
  and Frans Klaassen, “STEP-AND-SCAN AND STEP-AND-REPEAT,
  A TECHNOLOGY COMPARISON”, SPIE Symposium on 
  Microlithography, Santa Clara, March 10-15, 1996
[4] http://www.scheduling.jp/iss/2017/
[5] Yeonah Shim, Jaeyoung Choi, Jeahee Kim, Bo Su, Ping Zhang1 and
  Keun-Young Kim, “Improvement on OPC completeness through
  pre-OPC hot spot detection and fix”, Proc. of SPIE Vol. 6925, 692513,
   (2008)
[6]Armacost, Michael, et al. "Plasma-etching processes for ULSI
  semiconductor circuits." IBM Journal of Research and Development
   43.1.2 (1999): 39-72